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(3)(記憶と音楽)

お年寄りが、子供の頃や若い時などの遠い過去のことはしっかりと記憶しているのに、今朝食べた食事の中身を忘れたり、昨日会った人との約束を忘れたりすることによく皆さんは気がつかれるでしょう。
だんだん年を取ると「もの忘れがひどくなって…」とボヤかれる人もたくさんいらっしゃいます。
この「記憶」のメカニズムと音楽というのはけっこう密接な関係があります。
その説明の前に、まずは一つの「仮説」です。

人間の記憶には長期記憶と短気記憶があって、それぞれを記憶するための脳のメカニズムはそれぞれ異なっているという考え方があります。つまり、長期記憶というのは、パソコンのハードディスクのようなものに記憶がファイルとして「蓄積」されていて、それがあるキッカケで取り出せるような仕組みになっているというメカニズム。
一方、短期記憶というのは、実際は「記憶」ではなく、脳の神経回路のリアルタイムな「認知作業」そのものだという考え方です。パソコンに例えるならば、長期記憶がハードディスクに収納された「ファイル(=記憶)」ですし、短期記憶は、脳の神経回路が働いているかどうかという問題で、つまりはメモリーに匹敵にします。

ですから、認知症の方というのは、けっして「記憶」がなくなったわけではなく、脳のネットワーク作業、つまり「認知作業」に支障をきたしているだけですから昔のファイル(=記憶)はしっかりと脳の中に残っていてもけっして不思議ではありません。
ところが、さっき言われたことをすぐに忘れてしまうのは、実際は「忘れてしまった」わけではなく「認知作業」そのものの働き(シナプスでつながる神経回路の働き)がうまく行っていないわけで、「言われたこと」自体が認識できていなかったかもしれないのです。
例えば、自宅から駅までの道がわからなくなり迷子になってしまうといったことは認知症の患者さんにはよく起こります。でも、これも「道順」というきちんとしたファイルが脳からなくなってしまったと考えるよりも、駅から出てあそこの家を曲がって、コンビニを通り過ぎて、なんとかさんの家からの坂を降りていくと駅というネットワークとしての「認知作業」をきちんと行うためのキッカケがどこかで欠落してしまい、「道順」という認知ネットワークが動作しないと考える方が理にかなっています。
つまり、駅に行くまでのそれぞれのポイントにあったキッカケが認知ネットワークから追い出されてしまい結果道に迷ってしまうのかもしれないのです。
つまりは、パソコンのメモリートラブルに似ています。

でも、こんなこと健常者の私たちでもよく起こります。疲れ過ぎていたり何か別のストレスで脳が正常に働かなくなったりする時に起こったりします。
つまり、そんな場合、健常者の脳の中でもドーパミンとかセレトニンとかいった神経と神経の軸索を結ぶための神経伝達物質の量が一時的に足りなくなり正常な神経回路のネットワーク作業が行われなくなってしまうからです。これが恒常的に起こるのが認知症(あるいは、高次脳機能障害)だという風にも考えられます(認知症にもいろいろ種類がありますからこれで全てが説明されるわけではありませんが)。

これはまだ、あくまで仮説に過ぎませんが、この考え方で「認知症」の患者さんや多くのお年寄りと接すると、この記憶や神経ネットワークの働きに音楽が果たす役割はけっして少なくないと感じられるはずです。
人は、ある重要な情報を「記憶」として固定するためにかけ算の九九のようにゴロを使って覚えたり、歴史の年号を覚えたり、電話番号などさまざまな記憶しにくい情報に音楽的な要素を結びつけることで「記憶」を脳の中に固定しようと努めます。
音楽的なキッカケ(リズムやメロディなど)が神経伝達物質の代わりをしてくれるのです。
ある意味、日本の俳句、短歌、和歌も五七五のリズムの中で「うた」を作りその中にさまざまな情報をインプットする方法だったのかもしれません(この方法を使って幕府の隠密が虚無僧に扮し尺八のフレーズと共に歌の中に情報を忍ばせて暗号として持ち帰ったという説もあります)。

だとすれば、この方法は、現在深刻な社会問題になっている認知症の人たちの徘徊によるトラブルを解決する重要なヒントになるかもしれません。
例えば、「でんわばんごう、でんわばんごう、…」とリズムをつけてその後に自分の電話番号をつなげて覚えるという手法を各家庭でやれば、そのリズムと「上の句」と「下の句」のリンクで情報を認知症患者の人たちから引き出すことができるかもしれません(あるいは、できないかもしれません)。

音楽のリズムには、本当に人間の身体が「抗う」ことのできないほどの力があるわけですから、この方法を実際に試してみる価値は十分にあると思います。
少なくとも、お金もほとんどかかりませんし、何よりもクスリの副作用は全くないわけですから。
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プロフィール

みつとみ俊郎

Author:みつとみ俊郎
MUSIC-HOPEプロジェクトを主宰するみつとみ俊郎は、作曲家、フルーティスト、音楽評論家、指揮者として40年間日本、アメリカの第一線で活躍してきた音楽家。脳卒中に倒れた妻の介護をしながら音楽を医療、介護の現場で役立てるため、日々研究と実践に励んでいる。

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