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(4)動きと音楽=イメージが動きを作る

いつの頃からでしょうか、スポーツ選手にイメージトレーニングが欠かせなくなったのは。
ゴルフの選手がスイングする前に自分の打った球の軌道や高さ、スピードなどをしっかりとイメージしてそれを実際に行う。あるいは、イチロー選手のように、打席に立つ前に自分のスイングの形だけでなく相手ピッチャーのクセや配球を読み、自分が今何をしなければならないかを適確に判断してその通りのバッティングを打つ前にイメージした上で打席に入り、確実にそれを実行する。
もちろん、何事もイメージ通りにできれば世話はないのですが、スポーツの場合、実際の結果がイメージ通りになる確率が高いほど一流選手と言われるわけです。
これは音楽家でもまったく同じことです。
演奏家は、それが何の楽器であれ(あるいは指揮者であれ)指を楽器の上で動かす前に出すべき音をイメージしています。もしそれができないとしたら、音楽家としては失格かもしれません。
なぜなら、音楽家も先ほどのスポーツ選手と同じように、結果(しかも高いレベルの結果)をイメージしてそれを実行する能力を培うために日頃から鍛錬、訓練、練習を怠らないようにしているからです。
自分はこういう球を打ちたい、自分はこういう音を出してこういう演奏をしたいというイメージがない人は、ゴルフクラブや楽器に触る資格すらないかもしれません。

私がそこまで言い切れる理由の第一は、スポーツ選手にしても演奏家にしても、いっけんとてもフィジカルな身体の動きをやっているように見えますが、実際に身体を動かすところは手でも足でもなく脳だからです。
人の手や足は脳からの命令で動いているだけです(意志に関係なく動く突発的な反射も中枢神経からの指令なしには動きません)。
それが証拠に私たち人間は、時にどうしようもないほど「あがり」ます。
この「あがる」という状態を作り出しているのも脳です。
本番でパニックになって動かなくなるのは手や足(音楽家の場合なら指)、身体、そして心臓がパックンパックンしてくるわけですが(心臓の弁の動きも手足と同じフィジカルな動き)、その元を作っているのは明らかに脳です。
もし脳が何も考えないで本番に臨めれば人があがることはほとんどないでしょう。人は、「絶対に失敗できない」「失敗したらどうしよう」と自らの脳が自らの身体をパニックに陥れているのです。
ということは、逆に言えば、どんな一流の演奏家でもあがる可能性は十分あるわけですし、パニック障害を患う人のほとんどが「完璧主義者」だというのも、このことからある程度頷けます。

妻の恵子が脳卒中に倒れ半身が麻痺してしまった時、私はある人にアドバイスを仰ぎました。
恵子よりも早く同じ病気に罹患し、今はもう社会復帰を果たしていた友人です。
彼のことばはものすごく新鮮で、かつ私たち夫婦のリハビリにとても有意義なものでした。
その彼のアドバイスの中でもとりわけ印象的だったのが次のような彼のことばでした。

「みつとみさん、この病気のリハビリは楽器の練習と同じだよ。脳卒中というのは、脳から命令が末端の神経まで行かずに途中でそのネットワークが寸断されてしまったの。例えば高速道路の一部が壊れてしまって目的地まで行けないような状態を想像してみてください。でも、高速道路が壊れて通れないからといって目的地まで行くのが不可能になったわけじゃないことも知る必要があるんです。迂回路というのは幾つもあるはずなんです。もしかしたら時間は十倍も二十倍もかかるかもしれませんが、迂回路を作ってやればちゃんと手足は動くようになるんです。その迂回路を作るための訓練がリハビリ。これは、楽器の練習と同じなんです。世の中に生まれた時から楽器ができる人なんて一人もいません。みんなゼロから指の動き、手足の動きを覚え、そして最終的に楽器をマスターできるようになるんです。でも、正しい先生に習わないととんでもないことになりますよ。正しいイメージを教えてくれる先生に習って楽器を練習していかないといつまでたっても上手にはなりませんからね」。

以来、私は妻の恵子にリハビリ訓練時、常に「正しいイメージを持って身体を動かすように」と言うようになりました。
そして、彼はこうも教えてくれたのです。
「誰でも自分の身体にちゃんと先生を持っているんです。右手右足は動かないかもしれないけど、左手左足はちゃんと動くでしょ。だったら、その動く左手左足をしっかりと観察してイメージを作っていけば良いのです」。

この教えを私と妻は未だに守り続けています。
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プロフィール

みつとみ俊郎

Author:みつとみ俊郎
MUSIC-HOPEプロジェクトを主宰するみつとみ俊郎は、作曲家、フルーティスト、音楽評論家、指揮者として40年間日本、アメリカの第一線で活躍してきた音楽家。脳卒中に倒れた妻の介護をしながら音楽を医療、介護の現場で役立てるため、日々研究と実践に励んでいる。

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